Épagneul Breton−Vol.1
鳥猟犬はどんな仕事をするの?!!

  原産国であるフランスでÉpagneul Breton(エパニュール・ブルトン)と呼ばれるこの犬種は、
英語ではBrittany Spaniel(ブリタニー・スパニエル)と言い、12世紀ごろには既に存在してい
たことが伝えられています。Spanielの語源はEspagnol、Espanõlであり、今のスペインに由来
していることが判ります。

 スパニッシュ・ポインターと呼ばれるスパニエルの原種は古くから西ヨーロッパに広まり、
その子孫が各地で改良されてその国や地方独自の種として固定されました。
 その中でÉpagneul Bretonは名前の通りフランス北西部の大西洋に突き出したBretagne
(ブルターニュ)地方で飼われていたスパニエルですが、1900年代に入って漸く固有の犬種
として表舞台に登場したまだ新しいとも言える犬種なのです。

 ガンドッグ・グループまたはスポーティング・グループに分類される犬種ですが、ポインティ
ング・ドッグの中では最小で、体高・体長とも雄は50cm内外、雌は雄より各2cm程度小さく、
体重は13〜16kgの範囲が標準であり、中型犬に分類されます。

 色は白地にダーク・オレンジ(明るい茶色)・リバー(マロン)・黒の斑、黒・白・オレンジのト
リコロール(三色)です。仏系と米系がありますが、どちらも同じ犬種です。
 米系の方がやや大型の傾向にありますが、個体による差の方が大きいと言えます。

 とにかく賢くて従順、人間に危害を加える心配は全くなく、子供が大好きで良く遊びます。
 安心して子守をさせられる犬種として欧米では浸透しています。
 鳥猟においては先輩格のイングリッシュ・ポインター、イングリッシュ・セターなどと較べて
も同等以上の働きを見せます。

 このフランスが誇るÉpagneul Bretonは近年日本にも輸入され、次世代のNo.1鳥猟犬とし
て期待され、少しづつながら頭数も増えてきています。


 Épagneul Bretonが鳥猟においてどのような働きをするのか、ここでは日本の近代狩猟に
大きな影響を及ぼしたヨーロッパの狩猟をもとに説明することにします。

 「猟」とはその部首の「ケモノ」が示す通り、元来鹿や猪、狐などの獣を捕獲するのが目的
で、獲物は食用、毛皮として供されていましたが、やがて特定階層の趣味・スポーツへと変
化して行きました。

 狩猟は王侯貴族のものであり、多くの従者を引連れて行われ、山野を勢子やハウンドな
どの追跡犬で追い詰め、射穫していたのです。

 山野には獣以外に鶏と同類のキジ科の鳥類も多くいて、これら美味な鳥類は猟隊の「賄
食」として重宝され、やがてその捕獲方法が確立されました。一般的なスパニエル種等の地
上に付着した鳥の足臭を追う犬を使い、ブッシュなどに潜んでいる鳥を追い出す方法です。
 ブッシュの先に網を張り巡らし、この網に鳥を追い込んで捕獲したのです。

 この用途に使われた鳥猟犬がフラッシング・ドッグ(=突っ込み犬・掻き回し犬・追い出し
犬)の先祖であり、コッカー・スパニエル、スプリンガー・スパニエルなどの犬種は現在でも
使役されていますが、猟法の変遷とともに衰退し、アメリカン・コッカー・スパニエルを典型
的な例として、愛玩犬として飼われる傾向が強くなって来ています。

 散弾銃・散弾実包の開発によって「飛鳥射撃」(アスカ・・と読まないでください)が可能とな
り、鳥猟は一つの分野を確立しましたが、その普及とともに問題点も生じました。

 それまでの王侯貴族の猟は猟野を独占して行われていましたし、狩猟事故があっても文
句を言えない関係にありました。しかし時代が進み狩猟が普及して一般人が猟野に入り乱
れるようになると、事故が相次ぐようになりました。

 一般的な散弾銃はその構造上、弾を込めると自動的に撃発可能な状態になる仕組みに
なっていて、引鉄に小枝が触れたり、衝撃が加わっただけで狩猟者の意思に関係なく撃発
してしまうのです。これが「暴発」と呼ばれるものであり、現在でも狩猟事故の最大の原因と
なっています。

 いつ翔び発つか分からない鳥を撃つため、銃に弾を込めたままで猟野を移動することは、
この暴発と背中合わせでいる状態となり危険この上ありません。しかし、鳥が翔び発ってか
ら弾を込めていたのでは全然間に合いません。散弾銃の有効射程はせいぜい40〜50m
でしかないのです。また翔び出した鳥に慌てて銃を向けて撃ったら、その向こうにいた人に
当ったなどと言う事故も頻繁に発生していたことでしょう。


 ポイント能を持った犬種の改良によってこの問題点は解決されました。

 ポイント能とは文字通り「指示する能力」のことを言いますが、具体的には、鳥の臭いを犬
が感知して追及し、鳥の直前で静止する行動です。犬に鳥が見えている訳ではなく、鳥臭
の濃さで居場所を特定し、突っ込む前に静止した状態を保ち、気迫で鳥の動きを封じようと
します。
 “この先に鳥がいるよ!”とあたかも狩猟者に鳥の居場所を指し示しているかの姿勢を維
持します。これにより狩猟者は犬の数m先にいる鳥の存在を知ることが出来るのです。

 一部の犬種にのみ何故このポイント能が備わったのか、はっきりとはしませんが諸説ある
ようで、主なものとしては、
  @ 学習説
   キジ科の鳥の臭いが大好きな犬種は山野で遊んでいるうちに、鳥と遭遇して何度とな
   く逃げられ、やがて逃げられない距離を学習し、能力として身につけると言うものです。
  A 突然変異説
   突然変異により、濃い鳥臭に遭うと思考回路に何らかの異常が発生し、次の刺激が
   加わるまで動けなくなる形質を遺伝により先天的に備えていると言うものです。
 確かに、初めて鳥に遭遇した時にポイントできる犬はいないでしょうが、蛙の子は蛙と言う
ように特定の犬種にのみ遺伝的にこの資質が継承されることから、私的には突然変異説
に分があるように思います。

  このポイント能により犬が静止しているのを発見し、犬に近づいてから鳥の飛翔方向を
推定、矢先方向の安全を確認の上、弾を込めるという一連の動作が可能になったのです。

 やがて「GO!」、「良し!」などの号令で犬は突進し、驚いて翔び発った鳥は轟音ととも
に落下します。犬は落下した獲物を捜索・確保し主人のもとへ嬉々として持来するのです。

 賢い犬はこの 山⇒繁み⇒鳥⇒大好きな臭い⇒恍惚とした興奮状態⇒良し!の号令⇒
跳び込み⇒鳥の飛翔⇒銃声⇒鳥の落下⇒鳥探し⇒鳥の確保⇒大好きな臭いと感触⇒持
来⇒主人の喜びとねぎらい の一連の繋がりを理解し、鳥以外には興味を示さず、飽くこと
なくこれを繰り返そうとするのです。

 キジ科の鳥としてはキジ、コウライキジ、ヤマドリ、コジュケイ、ウズラなどが日本では猟
鳥として指定されていますが、その他ニワトリの原種仲間もいます。キジ目の鳥としては
ライチョウがいて、エゾライチョウは猟鳥として指定されています。また外国ではクジャクの
類、七面鳥なども棲息しており猟鳥として指定している国もあります。

 日本では従来鳥猟犬と言えば英ポインター、英セタ―が主流でしたが、猟欲、性能でこ
れらに勝るとも劣らず、小回りが利き、日常は愛玩犬としても従順で人懐っこいブルトンが
注目されています。

 ポインティング・ドッグとしては他に、ジャーマン・ショート・ヘア―ド・ポインター(独ポ)、
ビスラ、ワイマラナー、クライナー・ミュンスターレンダー、フランスにはエパニュール・フラ
ンセ、エパニュール・ピカール、エパニュール・ブルー・ド・ピカルディなどがいます。

 回収犬(レトリーバー)と獣猟犬については別のコラムを考えていますのでまたの機会に
ご覧ください。(獣猟はやらないので、全くの素人ですが・・・・・)

               Un maximum de qualités dans un volume minimum.

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